2023.05.26 お役立ち情報
〇ヘルステック議連 SaMD特性踏まえた保険制度の確立を “予見性向上”や“グローバル展開”など5本柱の提言案
自民党の「医療・ヘルスケア産業の新時代を創る議員の会」(ヘルステック議連)は5月18日、SaMD(プログラム医療機器)の産業の新規性に合わせた「薬事承認・保険償還システムの確立」や、ヘルステック産業のグローバル展開を後押しするための「提言(案)」を取りまとめた。同日は、議員から寄せられた意見を踏まえ、田村憲久会長、今枝宗一郎幹事長に修文作業を一任することを了承。近日中に加藤勝信厚生労働相に提言を申し入れ、政府が来月にも策定する、いわゆる“骨太の方針”への反映を目指す。
提言(案)は、(1)SaMD(2)パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の利活用促進(3)オンライン診療の充実(4)スタートアップ支援に向けたエコシステムと人材育成(5)グローバル展開の5本柱。
SaMDの「質の担保」と「産業の新規性に合わせた」薬事承認・保険償還システムの確立を提言。安全性が担保され、先進性、有効性の蓋然性がみられる製品について、「迅速な上市がなされるべきであり、イノベーションの現場のスピード感に沿う」薬事・保険制度のブラッシュアップを求めた。とくに開発初期のプログラム作成、発売後のカスタマーサポート・サイバーセキュリティー対策に費用と手間が掛かるという特性を踏まえ、2024年度診療報酬改定に向けて改めて整理を進めるよう訴えた。
技術料で評価されるSaMDについては、決定基準や評価軸を明確にするよう要請。医療安全の向上や医療従事者の働き方に資する価値を、「加算の評価軸」と定めることで予見性が向上し、投資を加速させることが可能となると主張した。保険適用後の再評価を求めるチャレンジ申請を、企業の望むタイミングで複数回できるよう呼び掛けたほか、PMDAや厚労省の相談・審査窓口の待ち時間短縮に向け、担当職員の増員や民間との人材交流の活発化を検討課題に挙げた。
PHRについては、“ユースケース”の充実を図ることで、課題の顕在化と精緻な整理につなげる構え。予算措置を講じて更なる連携に取り組むべきとした。高齢化時代にあわせ、認知機能の低下した高齢者など、多様な利用者を想定した「同意マネジメントの検討」を求めたほか、連携や相互運用を見据えた「標準化」「データの二次利用に関する基盤整備」の必要性にも触れた。
オンライン診療については、平時から診療体制を充実すべきとの立場。かかりつけ医によるものを基本としつつ、パンデミック、災害時のアクセス確保なども見据え、導入医療機関の数、幅広い診療科への広がるような取り組みを進めるとした。診療報酬の見直しも検討課題に位置付けた。
エコシステムの強化支援に向けて、日本橋や羽田殿町など既存のヘルスケア分野のクラスターを踏まえたイノベーションの拠点を創設する「グローバル・ヘルステック・スタートアップ構想」を提案。厚労省の「MEDISO」や経済産業省の「InnoHub」など、「スタートアップの相談窓口」については、更なる周知を図り活用を促すとした。
時価総額1000億円超の“ユニコーン”のスタートアップを創出するため、出口戦略をIPO(新規株式公開)に偏らず、大企業へのM&Aなども見据えるべきと指摘。税制優遇や財政支援、会計基準などの工夫が必要とした。なお、人材育成に向けては、医療機器分野で活躍できる人材育成を体系的に図るため、支援策をパッケージ化した「リスキリングプラン」策定を求めた。
グローバル展開に向けては、「JETRO」「メディカル・エクセレンス・ジャパン」などの既存組織の予算・体制強化を提案したほか、2025年の「大阪・関西万博での取り組み促進」に言及。万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」に関連させ、ヘルスケアをテーマとした国際会議やビジネスコンテストの開催、起業家教育の強化などを盛り込んだ。
同日の会合では、古川俊治参院議員が、SaMDを活用するうえで、保険外併用療養費制度の拡充を文言として盛り込むよう申し入れたほか、オンライン診療体制を平時から充実させることは、「ベンダーを儲からせるだけ」として、集約化した対応に改めてはどうかといった意見が寄せられた。
MEジャーナル記事より