2023.08.25 お役立ち情報
〇“物流2024年問題”が医療機器業界にも打撃か 販売業者が輸送力低下やコスト増対策で訴え
医療機器販売業界が、トラックドライバーなどの時間外労働に上限規制を適用する、いわゆる“物流2024年問題”への準備に苦慮している。トラックドライバーの働き方改革により、運転手不足や、長距離輸送力の低下が見込まれており、物流コストの追加負担が発生することは間違いない。販売業者は、メーカー、医療機関でのコスト負担の配分をどうするかという問題に直面しているほか、2年間公定価格が変わらないという制度上の課題にも直面しており、自助努力だけでは改善が見込めないとSOSの声をあげている。
物流2024年問題は、実施まで新年度(来年4月)まで半年程度の猶予はあるが、すでに円安やインフレ、ガソリン価格の高騰など、物流業界の経営に影を落としている。とくに公定価格が定められた医療材料は、販売業者による値上げの余地は限定的で、取引当事者間のパワーバランスで、コスト負担を販売業者が甘受せざるを得ないケースも想定される。
物流2024年問題が、医療機器流通に与える影響をみると、ドライバーの確保や連続勤務が難しくなることで、納品回数の減少や荷物を1日で輸送できなくなることで、患者の治療や診断が遅れるケースが想定される。さらに、緊急手術に使用される医療機器については、前日の手術依頼が入るため、メーカーから販売業者まで(もしくは販売業者から医療機関まで)を、物流業者にチャーター便をつかって発送しており、すでに赤字取引に陥っている。今後、チャーター便の増加や値上げ、場合によっては、運転手不足でチャーター便手配ができなくなることも懸念されるという。
こうした状況を踏まえ医療機器販売業界は、医療機関に対し、製品発注の早期化を要請するほか、時間・場所指定や製品を収める箱の汚れといった、厳格な納品ルールの緩和に理解を求めたい考え。緊急手術などを想定した、院内在庫の適正化などの必要性も増すとして、取引慣行の微修正なども検討課題に位置付ける。
昨今の物価高、インフレにより、技術料包括の医療機器については値上げが相次いでいるが、2024年問題による物流費用の上昇分については、コスト転嫁を受け入れてもらうことが安定供給につながると理解を求めていく考えだ。
行政には、公定価格が設定されている特定保険医療材料について、輸送力の低下や物流コストの上昇を見越した対応を事前準備してほしいと訴えていく。
具体的には、今年度の材料価格調査では、輸送力の低下や物流コストの上昇といった2024年問題に起因する問題が把握できないとして、2024年度改定以降に問題が顕在化した場合には、保険償還価格や、診療報酬を引き上げる緊急措置の実施を断行するよう求めていく。
現在、特材の実勢価格が、公定価格を上回る“逆ザヤ”の発生が増えているというが、材料価格調査の結果、改定前の公定価格を超える場合には、改定前の価格を超えないことが原則として通知に明記されている。医療機器業界は、この原則を削除することで、物流費の高騰への対処や、医療機関の経営悪化に歯止めをかけるべきと説いていく構えもみせる。
MEジャーナル記事より