2023.11.10 お役立ち情報
〇非造影CT画像から「すい臓がん疑い所見」を検出 神戸大と富士フイルム AI技術開発に成功
富士フイルムと神戸大は11月1日、AI(人工知能)技術を活用して、腹部の非造影CT画像から、膵臓がんが疑われる所見の検出を支援する技術を開発したと発表した。これに伴い、両者が今年4月に開発した膵臓がんの検出を支援する技術の適用対象を、造影CT画像から、非造影CT画像まで拡大する。一般的な検診や人間ドックで撮影される非造影CT画像から、より多くの潜在的な膵臓がん患者を拾い上げ、早期治療につなげたい考え。
膵臓がんは初期段階で自覚症状が出にくいため、早期発見が困難とされる。腹痛などの自覚症状が現れた段階では、すでに周辺組織への浸潤を伴う進行がんとなっているケースも多く、診断から5年後の生存率は12.5%と、がんの中でもとりわけ低い。患者数も肺、大腸、胃に次ぐ4位と多い。
両者は2021年から共同研究を開始、今年4月に腹部の造影CT画像から、膵臓がんが疑われる所見を検出する技術を開発した。約1000症例の非造影CT画像をAIに学習させ、膵臓がんの直接所見である腫瘤、間接所見である膵委縮・膵管拡張の検出に成功した。
造影CT画像に比べてコントラストが低く不明瞭な非造影CT画像にも対応することで、人間ドッグなどでもAI技術を活用した初期段階でのすい臓がん発見につながることが期待される。
神戸大大学院医学研究科内科系講座放射線医学分野の村上卓道教授は、「造影CT画像に加えて、非造影CT画像でも膵臓がんの検出を支援するAI技術が確立されれば、造影CTを撮像することのない検診や人間ドックなどのスクリーニングレベルの検査の段階で膵臓がん疑い症例を早期に拾い上げ、精査に回すケースを選別できる」と期待した。
同消化器内科学分野の児玉裕三教授も、「ごく早期の膵臓がんでも疑うことさえできれば、膵臓専門医による内視鏡を用いた検査により正確な診断が可能。このAI技術によって拾い上げられた所見を膵臓専門医による正確な診断へと効率良く繋げることにより、膵臓がんの早期発見と予後改善を目指す」と力を込めた。
富士フイルムの鍋田敏之メディカルシステム開発センター長は、「本技術の社会実装を早期に実現し、より初期の段階での膵臓がんの発見に寄与する」とした。
MEジャーナル記事より