2023.11.10 お役立ち情報
〇肺疾患へのエックス線“動画撮影”に保険適用を 次期改定で関連学会 従来検査より「低被ばく」
2024年度2024年度診療報酬改定で、呼吸器疾患に用いる「エックス線動画撮影・動画像処理技術」への新規保険適用を求める要望を、関連学会が取りまとめた。コニカミノルタの撮影装置などでパルス状のエックス線を照射して動画を撮影することで、静止画による形態診断(体の構造を調べる検査)に加え、機能診断(体の機能や病気の活動性を調べる検査)が可能となる。従来の診断方法で使用する「造影剤」や「放射性医薬品」と比べて低被ばくで済む。
対象疾患は、肺がん、肺血栓塞栓症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、中枢気道虚脱など。呼吸や心拍に伴う胸部の臓器の動きを可視化・定量化することができる。
撮影を担う診療放射線技師は、単純エックス線撮影の経験があれば対応可能だが、一定の手技の習熟したうえで取り扱う。読影医も一定の技術習熟が必要。
例えば指定難病のCTEPHでは、造影CTが普及しつつあるが、造影剤アレルギーなどがある患者にはシンチグラムが推奨されている。ただシンチグラムの実施可能施設は限られ、放射性医薬品も不足。費用も高額で、検査に時間がかかることもネックで、検査数は少ない。これに対し、エックス線動画撮影は、シンチグラム相当の肺血流障害の評価が可能で、造影剤も放射性医薬品も不要、非侵襲で、50分程度で検査が終わるという。
また肺がん患者にもメリットがある。CTやMRIで困難だった術前の癒着評価が可能となり、術式の最適化につながり、合併症リスクの低減・手術の安全性向上にも寄与する。このほか診療所などに設置すれば、COPDなどの潜在患者の掘り起こしにつながるほか、呼吸機能検査(スパイロメトリー)に相当する検査が実施できるため、コロナ禍での感染防止対策にもつながるという。
希望する診療報酬点数は2342点。年間の検査回数は約20万回で、医療費は約48億円かかる。肺切除やCOPDなど、既存検査の一部を代替できるとして、医療費14億円弱を差し引くと、保険適用に伴う医療費増は年34億5000万円と試算する。
今回の提案は、日本医学放射線学会が申請し、外科系学会社会保険連合が取りまとめたもの。外保連経由で、厚生労働省に提出済みで、今月末にも開かれる中央社会保険医療協議会の下部組織である医療技術評価分科会で対応案が示される模様。